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2006年4月23日 (日)

マエストロ

なんとなくのんびりとした週末。
やたらにクラシックが聞きたくなった。
こういう時、私がまず聴くのはカルロス・クライバーのDVD「ベートーヴェン交響曲第7番」である。観ると言った方が正しいかもしれない。

クライバーは、一番のお気に入りのマエストロである。
私のグル(教祖)と言ってもいい。

クライバーの指揮する演奏は素晴らしいが、「観る」ともっと面白い。
まあ私は専門家ではないので、ヴィジュアルに惑わされているのかもしれないけれど、本当に観て楽しい指揮者である。
このDVDは、アムステルダム・コンセルトヘボウを指揮したものだが、私はこの演奏自体は好きではないのだと思う。
録音のせいもあるかもしれないが、演奏というか音というか、こう・・・迫ってこないのである。
それでもこの7番は大好きだ。特に最終楽章はいい。

クライバーは、舞うように指揮をする。
観ていると、クライバーに合わせてオケが演奏しているのか、演奏に合わせてクライバーが踊っているのか、良く分からなくなってくる。
カメラ・ワークも良いのだろうけれど、クライバーの舞は、実に分かりやすく音楽を表現している。(クライバーは第1ヴァイオリンの方を向いている時間が圧倒的に長いので、カメラは第1ヴァイオリン寄りに設置されると聞いた)
彼は譜面を見ないので譜面台は無い。そんなものがあったら、邪魔でしょうがないに違いない(笑)
それぐらいダイナミックに指揮をする。観ていると私も楽しくなって来て、身体を動かしたくなるのだ♪
そして第2楽章の、花の匂いを集めてかぐ様な仕草。こんな風に指揮する人が他にいるのだろうか?(単なるファンの熱狂です)

私のオペラ初体験は、カルロス・クライバー指揮・ウィーン国立歌劇場東京公演「薔薇の騎士」であった。
東京文化会館の3階席最前列で、なんと5万円ナリ!
しかしこれが生涯唯一の生クライバー体験となったのだから、安いものかもしれない。

クライバーは数々の伝説を残している。
一番有名なのは、ドタキャンの多さ。
リハーサルで気に入らなかったりすると、いきなり帰ってしまったという。
そんな超ワガママぶりを発揮しても、多くのファンを魅了し、また多くの歌手・演奏家をも虜にしたのである。

「薔薇の騎士」では、会場の席に行くと、ビラが置いてあった。
文章の詳細は覚えていないが、「クライバー氏は大変神経質な人であるため、カメラのフラッシュをたいたり、物音がうるさかったりすると、公演が休止になる事があるので、気をつけて下さい」といった内容のものだった。
私はその後、随分とコンサートやオペラに行ったが、こういう「注意書」があった公演というのは他に無いし、聞いたこともない。

彼がキャンセル魔なのは知っていたものの、5万円である。クライバーである。キャンセルになったらどうしよう!
時間が迫る。オケが出てきた!!でも、まだ分からない??妙な興奮だ。
さぁ・・・とうとうクライバーが出てきた~!!!
私は、始まってからしばらく、舞台を見ないでクライバーの指揮ばかりを観ていたものだ。
これがクライバーの魔法なのか~?
ちなみに彼は、オペラでも譜面を見ない。一応ピットには置いてあるけど、全然見ていない。すごい!メトロポリタンで珍しく譜面をめくりながら指揮をしていたという記事を読んだ事があるけど、めったに譜面を見ない人らしい。
そしてオペラでも、舞う。
三大テノールの1人、ドミンゴが「オペラの映像収録ではもっとクライバーを撮るべきだ。自分の方は減らしてもいいから」と言ったという。

全然話は違うが、一昨年、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスで「薔薇の騎士」を観たら、当時「元帥夫人」を歌っていたフェリシティ・ロットが歌っていて、とても懐かしかった。

さて、クライバーの「薔薇の騎士」(DVDしか無い)は絶品だが、「椿姫」もまた素晴らしい。
残念ながら映像はないのでCDになるが、映像なんて必要ない。
そもそも「椿姫」は音楽だけでも楽しめる作品ではある。それでもクライバー盤は絶美だ。
コトルバス、ドミンゴらの歌も見事である。

音楽が素晴らしいと言っても、やはりオペラなので、映像で観るとより楽しめることは言うまでも無い。

もし理想のヴィオレッタがいたら、である。

オペラにおいて、劇中で想定された役柄と、歌手のイメージ(つまりヴィジュアルね)がそぐわないという事は多いと言われる。
「椿姫」も例外ではない・・・というか「椿姫」こそ、ヴィジュアル面で満足のいく歌手が歌ってくれないと困る。あくまで個人的な趣味であるが。
近年は、細くて、女優さんのようにキレイな歌手が多くなってきたので、DVDでオペラを楽しむには良い時代(?)になってきたように思う。
それでも「椿姫」のヴィオレッタの条件を完全に満たすソプラノは、今のところいないと思われる。少なくともDVDにはなっていない。

現在のところ、最高のDVDは故サー・ゲオルグ・ショルティ指揮で、アンジェラ・ゲオルギューが歌う、ロイヤル・オペラ・ハウスのライブだろう。
ゲオルギューは美しい(今は、だいぶ老け顔になってしまいましたね・・・)
ヴィジュアル的にはバッチリ。声もナカナカいい。
それでも歌手としては理想のヴィオレッタではないかもしれない。

一体、理想のヴィオレッタとは?
黒い髪の絶世の美女、高級娼婦で男たちを虜にし、そして結核でやつれて死んでいく。
これはゲオルギューでOK。今後はステファニア・ボンファデッリに期待しよう(DVDは出ているけど)。それとアンナ・ネトレプコが評判なので、こちらにも期待。
では歌は?
「椿姫」は、全編に渡って音楽が素晴らしい。従って、オケ(=指揮)がよっぽどヘンな演奏をしないでくれれば、それなりに楽しめると思う。しかし、歌手は難しい。
本間公・著「思いっきりオペラ」によると、ソプラノにも音域によってコロラトゥーラ、リリコ・スピント、ドラマティコ等区分がある。つまり歌手によって、若干歌える音域が違うらしい。考えてみれば、当たり前か・・・しかし問題は、これも本間氏によれば、「椿姫」のヴィオレッタは殆どソプラノの全音域を必要とする事である。
これが全部歌えて、ヴィジュアルにも美しかったのは、マリア・カラスだけだろうと言われている(本間氏による)。

ゲオルギューは、そんなに高い音は出ない(と思う。私はシロウトなので自信はないが)。メゾ・ソプラノに近いと思う。確かメゾの役も歌っているハズだ。
実際、有名な超高音の聴かせ所である第1幕の最後は、楽譜通り、もしくはそれより低く締めくくる。三点ホ音(と言うらしい)に挑戦していないのだ。
「乾杯の歌」も、やや不安定に私には聴こえる。
クライバー盤のコトルバスは、結構高い声が出る。第1幕の最後もかなり高い声で終わる。これでも三点ホ音ではないらしいのだが、明らかにゲオルギューよりイイ。というか個人的にはこれぐらいで心地よい(私はマリア・カラスの声は苦手だ)。歌以外の表現力も見事。全般的に高音がゲオルギューより安定している(但し、ライブではないので単純に比較は出来ないだろう)。
第2幕の「私を愛して、アルフレード」では、ヴィジュアルのせいもあるかもしれないが、ゲオルギューの方が、迫力があって断然イイ。(この場面特に好きです)
私は第2幕が一番好きである。このオペラの歌の美しさが凝縮されていると思う。
第3幕、終幕は、どちらも持ち味を出していて、それぞれ楽しめる。

結局、個人的に全てを満足する1枚というのは見つかっていないが、この2枚はかなりオススメである。特にDVD(ゲオルギュー)の方は、小難しい事は知らなくても、映画を観るような感覚で楽しめる。字幕もあるし。そう、結局、楽しければいいのだ。

ちなみにこのDVDを観ると、御婦人方は大概涙する。
私が実証済みである。
私はそういう使い方をした事はないが、何かの小道具(?)にも使えるかもしれませんぞ(笑)

あれれ、クライバーがいつの間にか「椿姫」になってしまった。
我がグルは、一昨年惜しくも他界されたので、もうナマで観る機会が無くなってしまった。残念である。恐らく記録上も存在しないであろうクライバー指揮の「第9」が聴きたかったのに・・・
朝比奈隆も、ギュンター・ヴァンドも亡くなっちゃったしなぁ。

しかし新しいグルは、現れた!
ヴァレリー・ゲルギエフである。
ザルツブルグ音楽祭でのウィーン・フィルとの「チャイコフスキー交響曲第5番」をCDで聴いて以来、気になっていたのだが、ロンドンで2回ほど聴きに行ってますます好きになった。
既に巨匠となりつつあるが、今後の活躍に期待である。
あとは小林研一郎さんですね。彼のチャイコフスキーも大好きです。

そういえば、最近コンサート行ってないなぁ。
本帰国する前に、もっと行っておかなくては。ロンドンは安いんですよ♪

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コメント

いちクライバーファンです。
ゲルギエフ、コバケンいずれも私も大好きなマエストロです。
このDVDの中で私が一番印象に残っているのは、クライバーが一瞬手を止めてソロパートに聴き入る箇所があるのですが(第一楽章のフルートソロと、たぶん第四楽章の途中)、オケのマエストロに対する尊敬と信頼感に応えている態度であるような気がして(単なる私の妄想かもしれませんが・・・)、グッときてしまいます。

M8さん

コメントありがとうございます。

第4楽章は見所満載ですね。
「え、聴こえないよ?」という感じで耳に手をやる仕草もあり、うん、ちゃんと指揮してるんだ。ただ踊ってるだけじゃないぞーと(笑)

そういえば一頃、クライバーの海賊版が随分出回っていました。
音質は当然良くないですが、演奏が素晴らしいのが幾つかありましたね。
ベートーヴェンの7番も、ウィーンフィルとのライブで、グラモフォンの正規版よりいいのがありました。
海賊版なので本当にクライバーか?という疑いもありますが、クライバーだと納得させる演奏であり、仮にクライバーの指揮でなくともイイと思わせるものでした。

最近、CD鑑賞・収集もお休みしています。
まあ収集の方は、帰国してからじゃないとムリですが・・・

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