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2007年4月15日 (日)

インフルエンザと感受性とサラリーマン社会

日本で、インフルエンザの特効薬とされるタミフルに耐性を持つものが人から人へ感染した可能性があるという報告が出たとの記事を見た(読売新聞年4月4日)

原因は言わずと知れた、「使いすぎ」である。

タミフルの全世界の消費のうち、約7割は日本。
他の国はというと、将来の鳥インフルエンザ対策として備蓄を進めている。
通常のインフルエンザで投薬治療をすることは欧米では少なく、毎日新聞4月13日の記事では、WHOの新型インフルエンザ対策部門スタッフが、個人的見解と断ったうえで、「従来のインフルエンザなら若い人には基本的に投薬は必要ない」とコメントしている。

日本は耐性菌大国である。
メチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)が、細菌による感染に占める割合は、先進国中最高水準にあると言われる。
医師が抗生物質などを濫用するばかりが原因ではないだろう。
これらの薬を出してくれと医師に迫る患者も多いと聞く。

私の家族が昔からお世話になっている医師は、
「番茶でも飲んで寝とけ」が口癖だった。
近頃では、薬を出さない医者はヤブ医者と言われかねないと嘆いておられたそうだ。

そもそも細菌やウィルスが問題なのか、それとも、これらは数あるリスク・ファクターの1つに過ぎないのか?

細菌学者でさえ、風邪やインフルエンザは、体力の低下やストレスが原因であり、細菌などは引き金に過ぎないと言う。
そしてまた、これらに対して副作用が出ない薬を作ることは、殆ど不可能である。

細菌学の父、ルイ・パスツールは、生理学者クロード・ベルナールと数十年に及ぶ白熱した議論を繰り広げた。

疾患の進行を決定するのは、細菌の毒性の強さか?人間の持つ素因の影響か?

パスツールは死の床で、「細菌は関係ない。素地が全てだ」と自説を撤回した。

ホメオパシーは、一貫してこの立場を貫いている。
個々人の感受性は、それぞれユニークである。
従って、どういう症状が出やすいか、どういう影響を受けやすいかは、それぞれの人の感受性による。

インフルエンザが流行っても、罹る人とそうでない人がいるのは、それぞれの人が持つインフルエンザ・ウィルスに対する感受性によるのだ。
漢方でも、「内因の無い所に外邪は入り込めない」と考えるそうだ。

ホメオパシーも漢方も、ウィルスや細菌をやっつける事を主眼に置いてはいない。
感受性をサポートして自然治癒力の働きを促し、感染に対する抵抗力を向上させる。

感受性はまた、生活習慣やストレスなどにも影響を受ける。
ここで、ウィルスは数ある要因の1つに過ぎない。
一番適切な治療は、(様々な意味で)休養である。

毎日新聞の同記事では、スイス人医師のコメントも紹介されている。
「タミフルを処方することはほとんどない。高齢者など合併症が心配な患者以外は、まずは1週間ほど休養を取ることが基本だ」

しかし、これが日本人には一番難しい。
特に会社勤めの人は、「そんなことは分かってるよー、でもね・・・」となるだろう。

この「でもね・・・」は深い意味を持つ。

ヨーロッパの人は、割と簡単に風邪等で休む。
しかも、病気で休んでも有給休暇は減らない所が多い。
イギリスもそう。
ドイツもそうだと知り合いが言っていた。

大抵の日本企業では、病気で休むと有給休暇が減る。
すると、ホリデーに出かける余裕もなくなる。

有給休暇の日数の問題だけでない。
上司であるオジサンたちの頭のどこかには、「しょっちゅう風邪で休んでて、ホリデーだと?」との考えがある。
恐らく、こういった思考回路は、それぞれの年層に何となく引き継がれていて、本人も「やっぱり、ここでホリデーなんて言えないよなぁ・・・」と考える傾向にある。
真面目な人は、ここで、家族や恋人とホリデーに出かけようとするならば、少々具合が悪い程度なら、頑張って出社する。
悪夢のような通勤ラッシュ、残業、出張、接待、etc。

辛い時に通勤ラッシュを避けられれば、幾分楽になるだろうに、「風邪ぐらいで、遅刻するな」って、オジサンの顔に書いてありそう・・・
フレックス・タイムと言っておきながら、9時に来いと要求する職場(上司?)もあるらしい。

インフルエンザになったって、おかしくない。
それでも出社しようとするなら、やっぱり「タミフルくれー」となるだろう。

例えが間違えてますか・・・?
薬が必要なんだよと主張する人は多い。「だって、出掛けなきゃいけないから!」
これは、日本人に根深いメンタリティだと私は思う。
似たような光景を、昔勤めていた会社で散々見て来た。

インフルエンザ等の感染症に限らない。
長年こういった悪夢のサイクルが続くと、今度は生活習慣病という形で、更にパワーアップして報いを受ける。

企業の人材管理は、マネジメントの重要課題である。
社員の健康管理というのも、重要な項目であるはずだ。
社員が最大のアセット(資産)であるとは良く言われる。
ということは、最大のリスクでもあるという事だ。

しかし、社員の健康問題に普段から多角的に取り組んでいる企業やマネージャーは、たくさんいるのだろうか?
人事部が管轄する健康診断など、つまり外注して、それで良しとしているだけではないか?
これほど生活習慣だ、ストレスだと世の中で言われているのに、こうした面で画期的な取り組みを見せている企業の話と言うのも、一般には殆ど聞かない。
特定の会社だけの問題ではない。
これは、日本のサラリーマン社会(と言ってはいけないのかな?)全体の問題だろう。

うーん、こんなことを考えていたら、自分のサラリーマン時代を思い出してしまった。
自分は上司と同僚に恵まれていたのだとシミジミ思う。

当時は、随分と経営書を読んで、ああでもない、こうでもないと考えていた。
今だったら、最大のリスク(=資産)である社員の健康に関するマネジメントというのも、面白そうなテーマだなぁ・・・

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コメント

お久しぶりです。ロンドンでお世話になった陽一です。
投薬に頼りすぎる日本の現状理解できました。
うーん、やはりsamさんのお言葉には説得力がありますね。

自分も社員を管理する職種につくものとして考えるところが
ありますが、日本企業社会の文化は変わりつつあるといえど
仕事が全てに優先するという考えは根深く社員の健康管理
が行き届くのは一部の企業に限られるのが実情ではないかと思います。
まず国の政策の方向性が企業優先ですし、中々世論が変わっていかないのも
日本人の個人の健康より仕事優先のメンタリティに問題があるのでしょうか。

陽一くん

お久しぶり!

それでも、近頃は随分変わってきたように思える時もあるけどね。
会社について言えば、考課システムとの兼ね合いもあるだろうから、単純な話じゃないと思うけどね。
でもまあ、「休めない」というのは、日本人の特長だよね。

あとは、メンタリティと言うか、価値観と言うか、
ホリデーだって、
長期休暇取るのは気が引ける、取らないのがアタリマエ
・・・だからね。LOHASには遠いなー

こんばんは。11年目にして機械営業部に異動になりましてo┤*´Д`*├o手形小切手に縁がなかったのでこの年齢になって新しいことをこんなにたくさん覚えなくてはならないとは。。。
毎日気が張っているからか、今の所大丈夫なのですが、最近私の周りの席の方々が風邪をひいていらっしゃいます。5人は確実に風邪だと言っております。確かに素地が大事なのかもしれません。気が張っている時って意外と風邪引かないですよね。でも、週末やちょっと安心した時にとどーっと具合が悪くなったり。大常務は今日もおっしゃいます。「気合が足りないから風邪を引くんだ!」と。強ち間違っていないのかもしれませんね。

ごもっとも。
やはり薬は副作用があって当然ですよね。
だって、食べれば体内全部にまわるんだもの。
症状が絶頂時に多少服用することは否定しないけど、でも何日分も薬をくれすぎるんですよね、普通の医者は。
うちの前の課長なんて、生活習慣病といいながら毎日薬を与えられて飲んでますよ。僕は、その薬に頼る習慣が生活習慣病だと思いますが。

で、自分自身のことですが、薬はあまり飲まないけど、アルコール飲みすぎ?ちょっと調子に乗りすぎですよね。
最近はほんと自分の年齢を自覚して、酒を飲んでも自重すればいいのにと思うのですが、、、、なかなか思ったように行動できないものです。アルコール、いと怖し。

うーん、飲まずに自制するながたくんを見るのも、ちょっとツマラナイなぁ~(笑)

興味深いですね。
 私もすっかり日本人のようで、朝「風邪で」とか「体調が・・・」とか連絡してきて休む方がいると「体調管理もサラリーマンの大事な仕事やろう!!」とか「休みたいなら顔出してからにしろよう」とか思っちゃうこともあります。
 感染する病気の場合は周りの人にうつさないためにも、休むのが社会人の「常識」にしたいですね。

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