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2008年7月10日 (木)

「近藤誠」論 3

さて、近藤氏のロジックとはどのようなものだろうか?

彼をトンデモ扱いする人も多いようなのだが、本当にそうだろうか?

抗癌剤、検診、拡大手術の是非についての論考でも、彼が拠り所にしているのは、エビデンスが十分でないということである。

彼は、くじ引き試験、つまりランダム化比較試験(RCT)を重視している。
これはEBM(Evidence-Based Medicine)という観点からすれば当然のことである。
つまり、「科学的な」証拠を求めている訳であり、これに対して「非科学的である」とかトンデモ呼ばわりする方が、(科学的であることを主張する立場からすれば)よっぽど非科学的な非難なのである。

近藤氏の大きな論点の1つは、
エビデンスが十分でない、有効性が科学的に証明されていない治療法や検診を、社会制度に組み込んで税金を使い、「みんないらっしゃい」という状態にしていいんですか?
・・・というものである。

もうちょっと言うと、そういう大事な事を、どうしてキチンと公衆に知らせないんですかという問題提起である。
市場主義とガン産業の存在をほのめかしてもいる・・・明言してるか(笑)

みんな医学は科学的だと思っている。その医学というのは、案外というか、かなり非科学的な意思決定の元に実行されているということなのだ。

そこへ、「エビデンス出せ!」って殴りこんで来た輩がいる。
あろうことか、医師ではないか?
なので、「けしからん!!」というのが実情だったのだろう。

名医の「有害な治療」「死を早める手術」 (だいわ文庫 C 104-1)」では、とても面白い部分がある。
対談者は、国立がんセンター名誉会長・市川平三郎氏である。
よろしいか?日本のがん治療の総本山の長みたいな大先生ですぞ(笑)

市川氏が近藤氏に対して言っていることは、

「くじ引き試験にも限界がある」

肺ガン検診のくじ引き試験に対して「その結果が全部正しいかどうか、疑問を持っている人はたくさんいる」

「くじ引き試験でもバイアスが入るのに、それほどくじ引き試験にこり固まる必要はないじゃない。」

「もう1つの視点があって、医学の進歩の殆どは試行錯誤の積み重ねできていることを考えるべきなのに、ただ「くじ引き試験」とだけ言う。」

「心の琴線に響かないんですね。生物学というのは深すぎるぐらい奥が深いんです。数学の方がある意味では簡単なんです。その数学が生物学をコントロールしようということが大間違い。手段に使うならいいですよ。手段ではなく数学に生物学がコントロールされるのは大間違いです。それと、私が思っていた以上にすごく「くじ引き試験」にのめり込んでいる。世界中がそうだからといって、世界が間違っているということはしばしばあるんですから。」

いかがだろうか?
一部抜粋したが、本を読んでみて欲しい。

私はすごく複雑な気分になった。
私自身は、RCT原理主義者ではないので、ここに抜粋したような市川氏の考えも理解できるような気がする(治療の方法論には賛成しない)。
しかし、ここでは異端と考えられている近藤氏の方が「科学的」であり、国立がんセンターという、まあ科学的医療の頂点とも言うべき病院のエライ先生の方が、議論の上では「非科学的」で、まるで立場が逆であるかのようである。

思い浮かぶのは、自称科学的な人や科学的な医師が代替医療を口撃する際の論法である。
「データが十分でない」「RCTでは否定されている」「科学的根拠に乏しい」

しかしだね、公費を使って社会制度に組み込まれている医療に対して、同じだけ、いやそれ以上にその厳しい目を向けるべきじゃないのかな?
より多くの人に被害をもたらす可能性があって、尚且つ被害を正当化されてしまう危険があるのはどっちだと言うのかね?

近藤氏が代替医療について言及する機会は少ないように思う。
しかし、彼ならば代替医療側にも当然のごとく「エビデンスを」とか「RCT」と言うであろう。
それは、フェアな態度である。

統計(RCTなど)というのは「絶対」ではない。それだけをもって全てを語ろうとするのはいただけない。というのが市川氏の論理であれば、それはよい。
一連の対談を読んでも、同じ論文・統計を見て、随分解釈が違うものだと分かる。
読み手の主観にも左右されるから、完全なる客観というのは存在しないのだ(残念ながらね、人間の宿命です)。

そこを踏まえた上で、可能な限り「もっともらしい」情報を得ようというのが、現在の科学的エビデンスというものであろう。
が、その「サイエンス」の努力・結果をもってして、白黒つかない治療方法等が当たり前のように公共で使われているのが問題なのだ。
それが近藤氏の論理の中核なのである。

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