好転反応 ~ホメオパシー患者学3
【Homeopathic Aggravation(好転反応)】
ホメオパシーのレメディを飲むと、色々な反応が起きます。まあ、何も起きない事もあります(笑)
通常、薬による反応というのは、病状が改善して行くというのが一般的な認識です。また強い薬による副作用や、薬に対するアレルギーというのも反応です。
薬に限らず各種の療法は、心身に何らかの形で働きかけて回復を図るものですから、その療法が良かろうと悪かろうと、心身は何らかの反応をします。もちろん個人差がありますから、同じ刺激(働きかけ)に対しての反応もそれぞれです。また、何も起きないように見える時も、心身が気付かぬ内にその刺激を処理しているか、日常感じるレベルの刺激の範囲に収まっているので、単に刺激と認識できず、何も起きていないと認識しているだけです。
例えば、水を飲みます。我々にとってはあまりにも当たり前の行為です。水を飲んで刺激だとは普通感じないものです。でも「あー、美味しい」と心が反応するかもしれませんし、時には水を飲んで具合が悪くなるかもしれません。何とも思わなくても、口から喉を通って、胃に入り・・・身体は水を処理するために、様々な反応をします。
同じことが薬にも言えます。ある薬を飲んで、「全然効かない」と感じ、実際その薬は目的の病気に効果が無かったとしても、その薬を消化したり排泄したりするために、身体は反応します。「効かないじゃないかー」というのもある意味、心の反応です(ちょっと屁理屈っぽいか・・・)。
東洋医学や自然療法の治療を受けると、「好転反応(瞑眩、メンケン)」という言葉に出くわします。健康ブームでもありますので、お馴染みの人も多いかもれません。好転反応とは、身体が回復に向かう過程で一時的に症状が悪化したり、発熱、発疹、だるい等の症状が出たりする反応を指します。眠っていた自然治癒力が目覚めて、活動を再開したサインと捉えられています。
薬の副作用と間違われることもありますし、好転反応だと思っていたら副作用だったという場合もありますので、好転反応に対する判断は大切です。
概して、好転反応の場合は、反応の出る期間が短く、反応が出た後、または反応と平行して改善が起こります。当然、本人の体質や病気によって反応が異なります。
ホメオパシーでも、好転反応に対応する概念があります。これは「Aggravation(アグラベーション)」と呼ばれています。しかし、Aggravationという言葉は、好転反応以外に、単に「悪化」という意味でも使われますので、英語では厳密に区別する時には「Homeopathic aggravation」と呼びます(文脈で判断できる時には、いちいちHomeopathicとはつけませんが)。日本人にとっては、「好転反応」でしっくり来る気がしますね。
ホメオパシーでいう好転反応も、概ね東洋医学等でいう好転反応と同じものですが、好転反応とは違う反応も存在しますので注意が必要です。
ホメオパシーでは、健康な人に病気の状態を引き起こせるものをレメディとして使います。従って、レメディが適切でない場合、新しい症状を引き起こされてしまう時があります。これは好転反応とは違い、「Proving(プルーヴィング)」と言います。(ホメオパシーの原理2【Proving】をご参照ください)
好転反応は、基本的に現在の症状が悪化します。今までに体験した事も無いような症状が出たら、プルーヴィングしている可能性があります。但し、プルーヴィングによる症状もまた一時的です(これも個人差があります)。
また、現在の症状が悪化するという好転反応の他に、過去に患った症状が再度現れることがあります。これも広い意味での、つまり治癒の過程としての一時的な悪化という意味で好転反応の1つです。しかし通常は、現在の症状が無くなってから出る事が多く、現在から過去に遡って症状を再体験するような感じです。(厳密には、好転反応と過去の症状の再体験は区別して考えます)
本当に良い意味での悪化であるかプルーヴィングであるかをホメオパスが判断するためには、患者さんによる自分自身の観察が必要になります。時には家族の助けが必要です。特に小さい頃罹った病気などは、本人が覚えていないことがあるからです。
また悪化と改善の順序も大切になります。個別のケースによりホメオパスが判断することですので、ここではあまり書きませんが、レメディを飲んで、最初に悪化してそれから改善・好転したのか、最初に改善してそれから悪化したのか、改善のみで悪化がみられないか等の順序、そして悪化や改善がそれぞれどれぐらいの期間続いたのかという時系列の整理が必要であり、これも患者さんが注意して記録しておくのが望ましいのです。
上で述べたように、好転反応は通常、現在の症状が悪化します。また、場合によっては風邪を引いたり、熱が出たり、だるくなったり、やたらに眠くなったりといった症状が出る事があります。
更にホメオパシーでは、心の好転反応も出ることがあります。レメディが精神的な部分にも作用するからです。
これも人により様々です。行動が変わる、発言が変わる、気分が変わる等々、色々と考えられます。好転反応ですから基本的には一時悪い方へ振れます。
心の好転反応は、夢を使って出る場合もあります。行動やムードといった形で表に出ない時は、夢に反映される事もあるのです。恐ろしい夢を見たり、いつもと違う印象深い夢を見たりします。
先ほどの悪化と好転のパターンのように、心の反応と身体の反応の組み合わせや順序も大切です。体調は悪くなったが気分は良くなった、体調は良くなったが気持ちは後ろ向きになった等、これもいろいろなパターンが考えられます。ホメオパスは「望ましい治癒の方向性」というのを常に念頭に置いて観察しており、こういった好転・悪化の反応のパターンによっては、好転反応ではないと判断される場合があります。
いずれにせよ、ホメオパシーでは患者さんがレメディを飲んだ後も、自分自身と向き合い、観察することが重要となります。
好転反応は、出る人と出ない人がいるように見えます。体質、精神状態、病気の状態、環境によって違ってきます。
「人工的に病気の状態を作りだすことの出来るもの(=レメディ)が、それと良く似た自然の病気を治すことができる」というのが、ホメオパシーの名前の由来になっている「類似の法則」です。
創始者ハーネマンの説明によれば、類似の法則のメカニズムとは、自然の病気のパワーに非常に良く似た人工的な病気のパワーが、自然の病気のパワーより強い時に、人工的な病気が自然の病気を「取り込む」ことによって自然の病気が消滅し、そして人工的な病気を起こすレメディの効力は(自然の病気に比べて)一時的であるため、自然の病気を取り込んだ後、速やかに去って行くというものです。
病気のパワー:人工的(レメディ)>自然の病気 ∧ 類似性:人工的な症状≒自然の症状・・・こんな感じです。
従って、非常に良く似たレメディを使うというだけでなく、レメディの力の方が強くなければ治癒は起こりません。そういったレメディを飲むと、その人の状態は人工的な病気の状態に一時的に支配されます。この状態は元の病気の状態に非常に似ている上、より強い力によって作り出されていますから、「悪化」したように感じられることが多いハズです。
つまり、あらゆる状況において、類似の法則に基づいて治癒が起こるような時には、必ず何らかの悪化を伴うと考えられるのです。しかし感じ方は人それぞれですから、最初に書いたように、反応が出ていても気が付かない場合も多いでしょう。
患者さんにとっては、特に痛みや痒みなどの症状や、人目につきやすい症状(顔の発疹等)が悪化すると、不安になったり、憂鬱になったり、処方が悪かったのではないかと怒ったりするのが人情というものですし、何よりも一時的とはいえ、悪化するのはつらいものです。患者さんにとって大抵の場合、好転反応はあまり有難いものではありませんが、好転反応が見られたという事実はホメオパスにとっては好ましいものです。
もちろん患者さんが悪化するのを喜んでいる訳ではありません。好転反応として起きた反応であれば、患者さんが治癒の方向に向かっていることが分かるからです。
そもそもホメオパシーでは、類似の法則(似たものを使い、反対のものは使わない)からも明らかなように、症状を押さえ込むのは良くないことだと考えています。逆に排泄するというのは悪いものを外に出すという意味において、基本的に良いことと考えています。例えば、発疹は皮膚からの排泄だとみなされます。好転反応と考えられる悪化は、排泄という文脈で定義できることが多いものです。つまり一時的に症状が酷くなることによって、その症状や身体の毒素、あるいは悪いエネルギーを「出し切る」ということです。先ほど述べた夢等による心の好転反応などは、精神的排泄(Mental discharge)と言う人もいます。
そしてそうした排泄が必要なものである限り、それを押さえ込むような方向での処方は、原則ホメオパシーではありません。
ということは、好転反応が出た時に(何度も言いますが、悪化が好転反応であるかの判断は非常に重要です)、ホメオパスはその症状を鎮めるようなことをしてくれないかもしれないのです。
「かもしれない」というのは、これも何度も繰り返しますが、患者さんそれぞれのケースに応じて対応しなければならないからです。
良いホメオパスは、患者さんのために最善の道を考え、選択します。好転反応に限らず悪化が起きた時の対応について、あらかじめ説明してくれるホメオパスは多いでしょうし、とにかく何か変化が起きたら連絡をくれと言うホメオパスもいるでしょう。
好転反応が出た時には、患者として我慢も要求されますが、かといってホッタラカシにされたままで居る必要もまた無いのです。
但し、悪化を自分で判断して、別の薬を飲んでしまったり、別のレメディを飲んでしまったりというのは、避けなければなりません。(こういう時、現代医療の薬よりもレメディを飲んでしまう方が困る時が多いものです)
何か起きた時の連絡するタイミングや対応の仕方については、特に悪化にまつわる状況では重要です。必ずホメオパスに確認しておきましょう。激しい発作が出たような場合、「ホメオパスに連絡してから・・・」なんて言っているヒマはないかもしれません。セッションのやり方以外に、こういった部分でもホメオパスの個性、経験、ホメオパスになる前の職業、出身学校(ホメオパシーを誰に学んだか、どこで学んだか)等で、方針が違うものです。
また、好転反応が良いことだという認識は全てのホメオパスが持っていると思いますが、好転反応に対する姿勢は、ホメオパスによって違うでしょう。
「好転反応が出るべき」と思っているホメオパスもいるでしょうし、「出たら、それは良いことだけれど、なるべくなら出て欲しくない」というホメオパスもいるでしょう。こういった部分も、ホメオパスのプラクティスの仕方に現れるものです。
私は、どちらが良いかということを論じるつもりはありません。全ては個々の患者さんの体質や状態次第であり、かつ患者さんとホメオパスとの関係性の中で育まれて行くことだと考えています。
患者さんの立場として肝心なのは、ホメオパスと「いい関係」を築くことです。「いい関係」もまた人それぞれです。それはホメオパス次第でもありますし、患者さん次第でもあります。ホメオパスとの関係をどう築いて行くかによって、好転反応が出た時の感じ方や過ごし方も変わってくると思います。もちろんどういうホメオパスを選ぶかということも関係します。
更に家族や友人の、ホメオパシーあるいは病気に対する理解というのも重要な要素になると思います。
私の経験では、代替医療を選択したり、食事を変えたりという場合、家族の理解がないと効果が出るまで続けることが難しいように思います。しかも家族の人たちは心配するからこそ色々と口を挟む訳です。病気が治れば万々歳ですが、常にそうとは限りませんし、うまく行かなかった時、ホメオパスが責められるならまだ良いのですが、患者さん本人が家族に責められるようだと不幸です。(残念ながら、現代医療を選択する行為の中に、ある種の納得感を得るという力学が働いているように見える時があります。特に癌の治療等)
多くの代替医療と共に、ホメオパシーの社会的な立場は不安定なものです。これから日本にホメオパシーが健全な形で定着し、発展して行くためには、ホメオパスの努力は当たり前ですが、患者さんの深い理解もまた不可欠です。
常に患者さんの安全と、「速やかで、優しく、永続的な健康の回復」という理想に向かって努力するのが、ホメオパスのあるべき姿だと私は考えており、そして、どういう治癒が理想的なのか?どういう医療が理想的なのか?病気とは、健康とは何なのか?患者となる1人1人も深く考えて行かなくてはならないのだと思います。その上でホメオパシーを理解するということが、良いホメオパスを育て、ホメオパシーを育てて行くことになるのではないでしょうか。
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