放射能で首都圏消滅
この著作は、東海地震が起きた場合の浜岡原発のことを予想しているものだが、起こりうるプロセス(事故)は、驚くほど今の福島原発の状況に似ている。
こうした著作において想定できているということは、当事者が、本来想定すべきリスクに対して、いかに怠慢であったかということが分かる。
全然「想定外」ではない。
科学の粋を集めた、と考えられていた原発が、どれほど非科学的な論理(政治的・金銭的利害)によって構築されていたか。改めて、科学の在り様が問われている。
同書の32ページから引用する。
地震の後、原発で事故が起こっても、政府や行政、電力会社から放射能に関しての正しい情報はすぐには出ない、と考えておくのがいいでしょう。
これまでに原発で事故が起こった時は、いつも発表は時間がたってからでした。一部の専門家がマスコミで指摘し、それから長い会議を開いてやっと公表するのが過去のパターンです。
真実が明かされるまでに終日待たされる可能性もあります。そんな悠長な話につきあっていたら、命がいくつあっても足りません。
政府や電力会社の対応も、気味が悪いほど想定内であった。
とはいえ、これまで原発の危険を訴えてきた人たちからすれば、当たり前のことだったのだろうけれど。
今回、さらに明らかになったのは、大手マスコミも、政府や電力会社と同列であったということ。同書で「一部の専門家がマスコミで指摘し」という部分が、インターネットで指摘し、となった。特に、勇気あるフリーのジャーナリストを通じて(感謝)。
本当に、大本営発表だけを当てにしていたら、命がいくつあっても足りない。しかも、悪影響は、子孫にまで引き継がれるかもしれないのである。
震災から1ヶ月が過ぎ、保安院もようやく炉心溶融を認めるようになった。
ここまで嘘をついておいて、今頃になって明かすということは、実際には、かなりマズイ事態になっているのかもしれない。
これまでは、どうにかなるから隠していても大丈夫だと思っていたのが、手に負えなくなったので、言っておこうと。そういう状態でないことを願うばかりだ。
異常値が出ると、計器がおかしいと言う。なんだそりゃ。では、これまで発表されてきた様々な数値も、正しく測定されていないかもしれないではないか。
公式発表されている放射線量や炉心の状態など、すべてのデータを疑う必要があるだろう。その上で、自分で出来ることをやっておく。
今のところは、それしかないなと思う。残念だけど。
ちなみに同書には、放射能対策についても書かれていて、とても実用的である。
« 低線量内部被曝の脅威 | トップページ | 『チャイナ・プロジェクト』が示唆する放射能汚染牛乳のリスク »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 放射能で首都圏消滅(2011.04.20)
- 低線量内部被曝の脅威(2011.04.06)
- 失敗の心理(2010.02.08)
- 思考のすごい力(2009.01.27)
- 乳がんと牛乳(2008.10.28)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント