良いホメオパスを見つけるには ~ホメオパシー患者学5
ホメオパシーの治療を受けるには、当たり前ですがホメオパスを探さなければなりません。
最近、ネット・コミュニティやウェブサイトを閲覧していて思うのですが、「~に○○というレメディが効いた」とか「レメディはどこで買ったらいいのか?」といった情報は飛び交っているものの、「どういうホメオパスを選ぶべきか?」という視点が案外無いことに気付きました。
そもそも人数が少なくて選択の余地が無いというのも大きな理由だと思います。しかしそんな中でも、なるべく良いホメオパスに診てもらうのに越したことはありません。
ここでは、ホメオパスを選ぶ際に、または現在のホメオパスを変える際に、考えておくべきと思われることを挙げてみようと思います。
【クラシカル・ホメオパシーとプラクティカル・ホメオパシー】
ホメオパシーには、大きく分けて2つの体系があります。クラシカルとプラクティカルです。
最大の違いは、1度に1種類のレメディしか投与しないのがクラシカル。複数のレメディ、またはコンビネーション・レメディと呼ばれる複数の物質を混合して作るレメディを投与することもあるのが、プラクティカルです。(特に、複数同時投与やコンビネーションを用いる手法を「ポリファーマシー(Polypharmacy)」と言います)
私はクラシカルを勉強していますので、プラクティカルの哲学や方法論がどういうものなのか、その全貌は分かりません。
プラクティカルは、創始者ハーネマンの時代と現代は違うのだから、当時の手法をそのまま持ってきても十分な効果は得られないと主張します。そうかもしれませんし、そうでないかもしれません。クラシカルもまた研究を重ね、その手法は進化しています。
私は自分がクラシカルを勉強しているからといって、プラクティカルが間違っていると言うつもりもありません。実際、本当に患者さんのためになる方法があるなら、それを取り入れたいと思っています。しかし、今のところ個人的には多数のレメディを同時投与するということにはあまり賛成出来ません。(この事については、【ホメオパシーの原理6】に書きました)
結局、どちらを選びなさいということは申し上げられません。どちらが良いか悪いかという問題ではないのです。
しかし最低でも、そのホメオパスがクラシカルかプラクティカルかあるいは他のコンセプトなのかを確認しておく必要はあるでしょう(処方を見れば分かる事ではありますが)。そして満足のいく結果が得られなかった場合、違う手法のホメオパスに行くという選択方法もあるのです。
また、長期的に見て症状が改善しなかったり、改善しても再び悪くなってしまう、あるいは悪化する一方という状態が続く中で、併用するレメディや投与量が増えていく・・・こんな状況で納得のいく説明がないのだとしたら、あなたは危険な状態に向かっていると思われます。
レメディが1つのみであろうと、ポリファーマシーであろうと、常にハーネマンの唱えた「最小限の投与量」という原則が尊重されるべきです。クラシカルはもちろんプラクティカル・ホメオパスであっても、まともな人ならば、これに反対はしないでしょう。
こういう事態を防ぐためにも、フォローアップのセッションをないがしろにするホメオパスは避けた方が無難です。逆に、フォローアップの大切さについての患者さんの理解も必要です。
結局人間の行うことですから、相性というのもありますし、最終的には、ホメオパスの能力、向上心、人間性といった個人の資質に依存します。
良いホメオパスとは、
1.患者さんの安全を第一に考え、自分の手法やホメオパシーに過度に固執しない。
何でもかんでもレメディで解決しようとするのは考えものですし、自分の方法論に固執するのも如何なものかと思います。現代医療との併用が必要な時もありますし、長期間飲んで来た薬をいきなり止めるのも危険な場合があります。何もしない方が良い時もあるでしょう。一番大事なのは、患者さんの安全であって、ホメオパスの信条やプライドではありません。必要なのは、バランスです。
患者さんの立場からは、フォローアップに行って何も処方されないと、損した気分になるかもしれませんし(笑)、医者に行けと言われたら、見捨てられた様な気がするかもしれませんが、こういったホメオパスの柔軟さは評価されるべきです。
2.話をしやすい=話を聞いてくれる。
当たり前と言えば、当たり前ですね。しかし案外話を聞いてくれない(雰囲気の)人や、人の話に耳を貸さない人が多いことも事実です。ここは人間的・生理的な相性とも関係するかと思います。
3.説明を十分にしてくれる(ホメオパシーについて、自分の処方について、他)。
話を聞いてくれるという要素と共通しています。ホメオパスとしてどういう方向性を持っているのか、ホメオパスとしての自分の哲学、どういう処方をしようとしているのか、あるいは一般的なホメオパシーについての質問に、丁寧に答えてくれるかどうかは、そのホメオパスが信頼に足るかを判断する材料になります。また、正直で、分からないことは分からないと言える人かどうかも重要です。知ったかぶりをしたり、専門用語でごまかしたり、怒り出したりする人は避けるべきです。これは別にホメオパスに限りませんね。
4.他のホメオパスを紹介出来る。
セッションを数回繰り返しても、満足の行く結果が得られない時、ホメオパスの方も、何かがしっくり来ないとか、今ひとつ踏み込めていない部分があるとか、何かがレメディの選択ないしは治癒の妨げになっていると感じているものです。逆に、全く感じていない人は少々問題です。そして、こういった事を患者さんに話してくれるホメオパスであって欲しいものです。場合によってはホメオパスを変えるという選択が、ホメオパスの側にもあるべきです。
ホメオパスは結構、ホメオパス間のネットワークを持っているものです。こういった時に、他のホメオパスを紹介してもらうよう頼んでみるのも良いと思います。
【医師のホメオパス】
医師がホメオパシーを実践するというのは、ある意味理想的です。
色々な所で書いていますが、病気や患者さんの状態によっては、現代医療による治療を優先しなければならない場合も少なくないと思います。
恐らく、今の日本で一番問題となり得るのは、ホメオパスが自分の方法論にこだわり過ぎて、患者さんを病院に行かせるタイミングを逸してしまい、病状が深刻化した場合だろうと考えています。
ホメオパスが医師であるなら、こういう事態はかなりの割合で避けられるでしょう。
イギリスのホメオパシーの学校では、解剖学、生理学、病理学の基礎を学び、速やかに現代医療の治療を受けさせるケースの判断といったことも勉強します。ホメオパシーも、現代医療から取り入れられる所は取り入れようとしています。
インドでは、医学校の基礎課程ではアロパシー(現代医療)とホメオパシーの区別がなく、専門課程に入って分かれるそうです。従って、ホメオパシー専門医(ドクター)ということになります。アロパシーのドクターがホメオパシーのドクターに患者さんを紹介することもあるようで、非常に住み分けがうまくいっている様です。結果、インドは世界で最もホメオパシーの研究や臨床が進んでいる国の1つとなっています。
イギリスにしろ、インドにしろ、程度の差はあるでしょうが、基礎医学の知識は持つべきとの発想は同じだと思います。ホメオパシーの長所・短所、アロパシーの長所・短所を知るということです。
但し、日本のホメオパシー学校でこういう教育をしているかは、私には分かりません。
そのホメオパシーがどういうものになるかは、結局その医師次第です。
ホメオパシーは、現代医療とは心身についての捉え方、治療についての考え方が全く違います。ホメオパシーは、それ自体が1つの治療体系であって、片手間で出来るものとは思えません。
世界には、ホメオパシーをメインに治療活動を行っている著名な医師(MD)のホメオパスがたくさんいます。彼らの多くは、ギリシアのヴィソルカス(George Vithoulkas)やインドのサンカラン(Rajan Sankaran)に学んでおり、彼らの経歴を見るとホメオパシー以外の代替医療にも造詣が深い人がいることが分かります(ちなみに面白いことに、世界的に名高いヴィソルカスは医師ではありません。)。
また医師であるがゆえに、現代医療に限界を感じて、より多くの患者さんを助けるために、ホメオパシーの世界に入った人が多いようです。恐らく、医師としても素晴らしい人だったのではないでしょうか。
このように、ホメオパシーを深く理解した人が、そこに医師としてのスキルを上手に加えて、ホメオパスとしてプラクティスを行うなら、何も言うことはありません。そうでないなら、やはり「現代医療の医師」なのであって、これはこれで、私は悪い事だとは思いませんが、「ホメオパス」という定義からは外れると考えています。
ホメオパシーのプラクティスは、医師だからうまく出来るという事でもないですし、医師だから、大して勉強していなくても実践して良いということではありません。皮肉な事に最近日本では、医師だから安心という認識も崩れて来ました。(幸いな事に、私が出会った医師の方々は、とても素晴らしい人たちばかりです)
なにゆえホメオパシーを実践しようと思ったのかという動機が、プラクティスに与える影響は大きいと思います(医師に限りませんが)。
自分の現代医学の治療のメニューの1つとしてホメオパシーを加えようとしているのか、レメディの効果に注目して薬の一種として使いたいのか、それとも現代医療に限界を感じて別のものを求めた結果なのか・・・こういった動機によって、その処方や哲学は随分変わってくるのではないでしょうか?
レメディを、現代医学の薬と同じように扱って対症療法的に処方するなら、それはホメオパシーではありません。ホメオパシーを深く学び、ホメオパシーの素晴らしさを知ったなら、そのような処方になるはずもありません。
私は、医師であるということはアドバンテージだと考えていますが、ホメオパスとして本当にアドバンテージとなるかは、それはその人が一旦、アロパシーから離れてホメオパシーにどっぷり浸かることが出来るかに掛かっているのだと思います。その上で、アロパシーに対する取り組みやこだわりがどうなるかで、その人のホメオパシーがどうなるかが決まってくるような気がします。
医師でホメオパシーを実践している、あるいはこれから学ぼうとしている少しでも多くの方々が、ホメオパシーの本当の素晴らしさを知ってくれることを願うばかりです。
さて、良いドクター・ホメオパスの見分け方は、他のホメオパスの場合に加えて、
1.セッションがやたらに短く、検査機器等を多用し、所謂医学用語を基にセッションを進める。
2.現代医学の治療が第一で、副次的にレメディを処方する。
3.身体症状ばかりを聞き、精神的・感情的なことにはあまり触れない。
こういう人であったなら、その人はあまりホメオパシーのことを理解していないか、少なくともその人はホメオパスではありません。
現代医学の治療が優先され、レメディをサポートとして使用する必要がある場合もあります。しかし、常にアロパシーを優先し、更にレメディを薬の一種として処方するなら、それはホメオパシーとは言えないでしょうし、レメディは抑圧的にしか作用しないことが多いと思います。
もちろんバランスの問題ではあります。医師としての長所を生かしたセッションや処方があってもいいかもしれません。現代医療版ホメオパシーというのが出現する日も来るかもしれませんね。但し、そういう場合にも、世界的に有名なMDのホメオパス達が何を教えているかを、じっくり研究して欲しいものです。
また、患者さんがそういった治療で満足なら、それはそれで構いません。ホメオパシーや医療に何を期待するかの選好の問題です。
【出身校・誰にホメオパシーを学んだか】
どこの学校で誰に学んだかというのも、そのホメオパスを判断する要素になります。
とりわけ学校で、あるいは卒業後に誰に学んだかは、その人の処方に大きな影響を与えます。
日本にある学校は3校ですが、2校はクラシカル、1校はプラクティカルです。
この他、日本ホメオパシー医学会という団体のコースがあり、これは医師・歯科医師・獣医師・薬剤師以外は受講できませんし、どういうホメオパシーなのかは分かりません。
ホメオパスの経歴を見てみましょう。
学校の先生が誰か?その先生は誰に学んだか?
こういったことを辿る事によって、その人のプラクティスの特徴が大まかに見えてくるものです。
ホメオパシーを勉強していない人は、世界のホメオパスや教師がどういう人かを調べるのは難しいかもしれませんが、ネット・コミュニティなどを利用して、質問してみるのもいいかもしれません。
もちろん、教わった人とその人が、全く同じわけではありませんが、大体、誰を尊敬しているか、誰に影響を受けたかといった好み・傾向がプラクティスに影響しているものです。
気を付けなければいけないのは、学校や団体によって「輸入」されたものが、元のものとは別物になっている可能性もあるということです。
イギリスの団体や学校と提携しているからといって、その学校が「英国式」とは限りません。これも悪い事だとは思いませんし、日本式なら日本式で構わないのですが、英国式のようなものを期待されている方は注意が必要です。
また、一部で指摘されている様に、現在の日本のホメオパシーは、セルフケアやファースト・エイドのレベルに留まっている状態であり、殆どの処方が、その単なる延長線上に在るような状態に陥ってしまうという危険も否めません。
そんなホメオパシーであって欲しくありません。単なるハウ・ツーの、まるでマニュアル化された現代医学の処方のようになってはならないと思います。
真の治癒とは何か?を真摯に追い求めるなら、現代医学的(対症療法的)な処方や、レメディをサプリメントのように扱うといった発想は出て来ないと考えます。
真のホメオパシー。それを追求して行く過程で、どの手法を取っても考えなければならない事は、そんなに違わないはずです。
私が出逢った日本の方々は、医師の方も、そうでない方も、それぞれ本当の治癒や医療というのを探求されており、また非常にバランスの取れた考え方をお持ちです。こういったホメオパスがドンドン増えてくることを期待していますし、患者さんもまた、ホメオパシー的な治癒を求めるならば、それは一体何か?に目を向けて、ホメオパスを見る目を養って頂きたいのです。
【代理店制度?】
一部の団体で、「代理店制度」を採っている所があると聞きました。
ホメオパスが代理店になっているというものです。ビジネス的には、面白い戦略ですね。ホメオパシーを日本に広めるという目的としても、良い方法かもしれません。
しかし、これは倫理的な問題を抱えています。「売らんがための処方にならないか?」ということです。本質的に、薬を処方する人がその薬の販売代理店であるというのは妙な話です。この団体はレメディを作っているとも聞いています。
また、例えば地域代理店制度等により、患者さんがホメオパスを選択する際に不都合が生じるようだと、これも問題です。ホメオパスの選択は、患者さんの自由です。
私は代理店戦略が必ずしも悪い事だとは思いませんが、今後、ホメオパシーが日本で盛んになるにつれ、消費者である患者さんの目も肥えてきます。そういった、今後起こりうる厳しい世間の評価に答えられるようにして行かなければなりません。団体としての倫理観が問われることになるでしょう。
更に、代理店制度はホメオパスを良くも悪くも拘束します。過度に閉鎖的・排他的な思想は、ホメオパシーに反するものです。この制度が、ホメオパスの学びの機会や個人としての自由な活動の妨げにならない様、祈っています。
消費者としては、
1. レメディ代が、相談料と別になっているのか。
2.ホメオパスの選択に干渉してくるか。
3.やたらに特定の商品を勧めないか。
こういったあたりに留意しておきたいものです。
【患者さんがホメオパスを育てる】
現在のところ、ホメオパシーは代替医療という位置付けですが、本当は主とか副とかではなくて、現代医療との「相互補完医療」なのだと私は思っています。
そうなるように、個々のホメオパスはもちろん、特にホメオパシーの団体や学校が活動しなければならないと思っています。
そして良いホメオパスは、患者さんが育てるものだとも思います。
患者さんのホメオパシーに対する理解、そこから生じる厳しく暖かい目、そういったものがこれからの日本のホメオパシーを支えて行く大きな力になります。
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